1.ヘリコバクターピロリ菌とは
ヘリコバクターピロリ菌とは、強酸という過酷な環境である胃の中に棲むことができるユニークな細菌です。1982年に、オーストラリアのマーシャル先生とワーレン先生が発見しました。2005年マーシャル先生たちは、この業績によりノーベル賞を受賞しました。
ヘリコバクターピロリ菌は、胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因となっていることがわかっています。またヘリコバクターピロリ菌感染者には、胃癌の発生が多いこともわかっています。慢性萎縮性胃炎の人では100%、胃潰瘍の人では70~90%、十二指腸潰瘍の人では90~95%に、ヘリコバクターピロリ菌の感染がみられます。
日本は、欧米と比べて感染率が高く、50歳以上の人では70~80%が感染しているといわれています。
2.ヘリコバクターピロリ菌の検査
当院で行っているヘリコバクターピロリ菌の検査としては、内視鏡を使用する方法としては迅速ウレアーゼ試験があります。内視鏡を使用しない方法としては、尿素呼気試験と血清抗体価、便中抗原検査を行っています。
胃内視鏡検査にて、胃炎が確認されれば、健康保険診療として、ピロリ菌の感染の有無を調べる検査を行うことができるようになりました。また感染があった場合、ピロリ菌を退治する除菌治療も保険適応となりました。 ヘリコバクターピロリ菌の感染が心配な方は、一度胃内視鏡検査を受けてみてください。
1)尿素呼気試験
朝空腹時に、炭素の同位元素からできているユービットという錠剤(尿素製剤)を内服して、前後の吐く息をバックに集めて、ヘリコバクターピロリ菌による尿素の分解が行われたかどうかを検査します。検査時間は20分、結果は2分でわかります。内視鏡は使わず、薬をのんで息を吐くだけの検査ですので、朝食べないで来院されれば、予約がなくても検査可能です。
2)迅速ウレアーゼ試験
胃内視鏡検査のときに、胃の中の2カ所から組織を採取して、この中にヘリコバクターピロリ菌がいるかどうかをみる検査です。ヘリコバクターピロリ菌が分泌するウレアーゼという酵素が産生するアンモニアの有無を調べます。胃内視鏡検査を行ったときに、胃潰瘍・十二指腸潰瘍がある方や胃炎の強い方は、その場で検査をします。判定には、およそ15分から2時間かかります。
3.ヘリコバクターピロリ菌の除菌治療
胃の中にいるヘリコバクターピロリ菌を退治するためには、3種類の薬(抗生剤2種と胃酸分泌を抑える薬を1種)を、1週間のみます。除菌治療中は、副作用が強くなる可能性がありますのでアルコールは控えてください。
1回目の除菌治療の成功率は、およそ70%です。不成功の場合は、メトロニダゾールという薬を使ってもう1回再除菌ができます。再除菌の成功率は、1回目でうまくいかなかった方の90%が除菌できます。除菌治療全体の成功率は、97~98%ということになります。100人除菌治療を行うと2~3人どうしても除菌できない方がいます。
除菌治療中の副作用としては、抗生剤によりムカムカする吐き気がでたり、便がゆるくなって下痢気味になったり、味がおかしくなる方が、ときどきいます。頑張って、なるべく1週間のみきってください。
除菌治療の問題点は、除菌が成功すると急性炎症がおさまり、胃酸の分泌が回復するために、胃酸の逆流により食道炎をおこしている方は、胸やけなどの逆流症状が悪くなることがあります。通常その程度は、軽く一時的であることが多く、治療が必要になることはまれです。
4.除菌判定
除菌治療の薬を飲み終わってから1ヶ月たってから、除菌判定を行います。方法は、尿素呼気試験です。朝何も食べないで来院してください。20分ほどで検査は終了します。除菌判定には、内視鏡検査は必要ありません。来院時に受付で、「除菌判定」と言っていただくと、診察を待たずに検査を受けることができます。
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