ソケイヘルニアの日帰り手術は、諸般の事情により2019年2月4日をもって終了いたしました。
今後受診されるソケイヘルニアの患者さんには、診察を行い手術適応を判断した上で、手術を行っている連携病院を紹介いたします。
当院で手術を受けられた患者さんの術後のフォローアップは、これまで通り行いますので院長外来を受診してください。
ソケイヘルニアとは
おなかの壁が弱くなり、おなかの壁の隙間から、おなかの中の腸や脂肪などがでてきて、足のつけねがふくれてくる病気です。大きさは、ウズラの卵くらいの小さなものから子供の頭くらいの巨大なものまで様々です。ふくらみは、通常はやわらかく、押せばへこみます。立ったり、力をいれてふんばると膨れてきます。痛みがなく違和感程度のこともありますし、痛みが強いこともあります。腸がはまりこんで戻らなくなると「嵌頓」といって硬くふれて強い痛みがでます。
生まれる前、男性の場合は、睾丸がおなかの中にあります。この睾丸が生まれるまでに降りてきて、おなかの壁をとおりぬけて陰嚢におさまります。このとき通った道が「ソケイ管」と呼ばれる場所です。ここが構造的にやや弱いため、ソケイ管からおなかの中の腸や脂肪がおなかの壁の一番内側にある腹膜という薄い膜に包まれた状態ででてきてしまうのです。女性の場合は、滑脱ヘルニアといって卵巣や卵管、膀胱の一部がててくることもあります。またふくれている部分の腹膜の中に、子宮内膜症が合併して、生理のときに腫れが大きくなったり痛みがでることもあります。
男性に多くみられますが、女性にもおこります。右側に多くみられる傾向があります。
ソケイ部のヘルニアの種類
ソケイ部のヘルニアには、3種類あります。
足を曲げたときに折り目になってしわができるところがソケイ靭帯というところですが、その頭側にでてくるのがソケイヘルニア、その足側にでてくるのが大腿ヘルニアです。
ソケイヘルニアには、2種類あります。おなかの中から見たときに、内側の膀胱に近いところからでてくる内ソケイヘルニア(直接型ともいいます)と外側からでてくる外ソケイヘルニア(間接型)があります。からだの表面にでてくるところは同じなので外からはなかなか区別がつきません。手術の方法は、基本的には同じです。
大腿ヘルニアは、女性に多く、足にいく血管の内側の弱い部分から、腸や脂肪組織がでてきます。
ソケイヘルニアの治療
ヘルニアバンドというバンドで圧迫したり、パンツで圧迫したり、テープでおさえるなどの姑息的な方法がありますが、根治的に治すには手術しか方法はありません。ヘルニアがあるからといって必ず手術をしなければならないというものでもありませんが、次第に大きくなり不快感がありますので、手術をうけて治されることをお勧めします。
手術を受ける場合は、バンドやテープでの圧迫はおやめください。皮膚が傷つき、手術のときの感染の原因となります。
ソケイヘルニアの日帰り手術
一般的な日帰り手術についてご説明します。通常の手術と違う特別な、1~2日で治ってしまう魔法のような手術があるわけではありません。
ソケイヘルニアの手術には、大きくわけて2つのやり方があります。
従来の方法は、でてきたヘルニアの袋を切り取って、筋膜という組織を縫うことによって、再発しないように補強をするやり方。
もう一つは、「メッシュ」という合成繊維からできているシート状の補強材を用いて補強を行うやり方です。日帰り手術は、後者の「メッシュ」を用いて手術を行います。この方法であると、術後の痛み、突っ張り感が少なく、日帰り手術に適した方法といえます。「メッシュ」にはいろいろな種類があります。メッシュを使った手術のアプローチの方法としては、ソケイ部を5~8cmほど切開する方法と内視鏡を使った方法があります。
日帰り手術は、痛くないかといえば、やはり手術ですので多少の痛みはありますが、麻酔の方法などを工夫することにより、当日帰宅して、自宅療養が可能であるということです。
従来の病院での入院治療といっても、実際には、病院のベッドで寝ているだけのことが多いので、病院ではなく、住み慣れた快適な自宅で療養して頂くのが日帰り手術です。
現在都内では、いくつかソケイヘルニアの日帰り手術を積極的に行っている医療機関があります。